記事の監修
株式会社リアルプロモーション 代表取締役松本剛徹
2011年に株式会社リアルネットを創業して、20代経営者ベストベンチャー30に選出される。
現在、全10事業を多角的に展開し、AI・教育・Webマーケティング・プロモーションなど4社を経営。
グループ年商は20億円を突破。事業売却や事業譲渡、会社売却を経験してきたシリアルアントレプレナー(連続起業家)として活躍中。
技術革新や消費者ニーズの細分化により、現在の消費者市場は、ものすごい速さで変化し続けています。
今ヒットしている商品も、5年後、いや下手をすると1年後にも飽きられている可能性がある。企業は、そういう先の見えない状況のなかで、戦っていかなければならないのです。
そうなると多くの企業は、既存事業とは別に、なにか新規事業を仕掛けていこうと考えます。
ところが、これまでに新規事業を立ち上げた経験の少ない経営者は、どうやって成功する新規事業をスタートさせればいいかがわかりません。
そこで今回は、新規事業の成功に直結する「新規事業開発のプロセスづくり」について、詳しく解説していきます。
新規事業開発の道筋(プロセス)さえ明確であれば、新規事業はもうほとんど成功したようなものです。新規事業の開発を検討中のかたは、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
成功する新規事業開発4つのプロセス
成功する新規事業開発のプロセスは、大きく以下の4ステップに分類されます。
- 新規事業のアイデアを徹底リサーチ
- 売れるビジネスモデルの構築
- 事業計画の作成
- 新規事業の検証・修正
ひとつずつ見ていきましょう。
1.新規事業のアイデアを徹底リサーチ
新規事業の開発には、まずなんといっても、ビジネスのもとになる「ビジネスアイデア」が必要です。
しかし、ただ闇雲にビジネスアイデアを探しても、正直あまり意味がありません。なぜなら、多くのビジネスアイデアは、そのままでは使えないからです。
ビジネスアイデアを実際に「使えるアイデア」へ磨いていくためには、2ステップにわけて、詳細を煮詰めていく必要があります。
- 世の中の不平不満をリサーチし、その問題を解決する商品(サービス)を開発する
- 見つけたアイデアに、差別化を付与するにはどうすればいいかを検討する
まずは、不平不満のリサーチについて解説します。
世の中の不平不満をリサーチし、その問題を解決する商品(サービス)を開発する
新規事業成功の確率をアップさせたいならば、まずは「不平不満のリサーチ」をしましょう。経営者のなかには、自分のやりたいことを事業化したがる人も多いですが、これは正直オススメできません。
なぜなら、あなたのやりたいことが、消費者に受け入れてもらえるとは限らないからです。
その点、多くの人が抱える不平不満を解消する商品ならば、そういった不満を抱える消費者層から熱烈に支持されるでしょう。
自分の達成欲を抑えて、世の中の役に立つアイデアを探せるかどうかが、新規事業開発の成功を決めるポイントになります。
なお、私がいつもおこなうリサーチ方法は、12種類ほどあります。リサーチ方法について詳しく知りたいかたは、無料Webセミナー「新規ビジネスの創り方」でご確認ください。
見つけたアイデアに、差別化を付与するにはどうすればいいかを検討する
不平不満を解消できそうなアイデアが見つかったら、今度はそのアイデアを活かしたビジネスコンセプトを決めましょう。
どんなによいアイデアだとしても、モノやサービスが溢れかえる現代社会では、必ず類似商品が見つかります。
つまり、なにかしらの差別化がないと、どんなによい商品でもなかなか選んでもらえないのです。
たとえば、女性専用フィットネスクラブといえば、カーブスを思い浮かべる人は多いと思います。これは、「運動する姿を男性に見られたくない」という女性心理を、これまでのフィットネス市場に反映させた「差別化の好例」ではないでしょうか。
現在では、有名なRIZAPが仕掛ける「EXPA(エクスパ)」なども猛烈に展開中ですが、やはりカーブスの知名度には追いついていない状態です。
このように、ほかの企業より早く、差別化が世間に認知されれば、特定の市場でNo.1のポジションを狙っていけます。
私たちも「◯◯といえば、あの会社だよね」と評価されるように、アイデアに差別化を組み込んでいきましょう。
◆差別化を生み出す発想法に関する記事は、こちらでもお読みいただけます
2.売れるビジネスモデルの構築
世の中の不平不満を解消する商品が開発できたとしても、残念ながらそれだけでは、新規事業の開発が成功したとはいえません。
どんなによい商品も、どうやって売っていくかまで計画しなければ、実際に消費者へ届くことはないのです。
具体的には、まず「誰に・何を・どう売るか」を煮詰めていきます。とはいえ、この時点で、もう「何を売るか」は決まっているので、あと決めるべきは「誰に・どう売るか」だけです。
なかでも「誰に売るか」は、非常に重要です。多くの経営者は、できるだけたくさんの人に買ってもらいたい」と考えます。もちろんその気持はよく理解できますし、経営者としては当然の判断でしょう。
しかし現実には、ターゲットを広げれば広げるほど、反対に買ってもらえなくなります。
なぜなら万人に向けた商品は、本当にその問題で困っている人にとって、中途半端に映るからです。特定の問題で困っている人は、その特定の問題を徹底的に解決してくれるディープな製品を求めています。
したがって、商品を届けるターゲット層は、とにかく徹底的に絞りましょう。この絞りに絞ったターゲット層を、「ペルソナ」といいます。
ペルソナについては、別の記事で事例を紹介していますので、ぜひそちらも確認してみてください。
3.事業計画の作成
ビジネスアイデアが決まり、商品を開発したら、売るためのビジネスモデルを構築する。ここまでは、すでに説明したとおりです。
ここまで新規事業の骨子ができれば、あとは詳細な条件を組み込んだ、事業計画の作成に取りかかります。
事業計画の目的は、大きく2つあります。
- 事業内容を周知徹底して、関係者の意識を統一するため
- 金融機関に、融資の承認をもらうため
どちらにしても事業計画には、その事業が成功する根拠と資金計画などが、しっかりと盛り込まれていなければなりません。
とくに金融機関は、新規事業の市場性や実現性・採算性などを、徹底的にチェックしてきます。もし、金融機関に事業計画を認めてもらえなければ、当然融資は受けられません。
必要な資金を確保できなければ、商品化も広告展開もできませんから、なんとしても「金融機関が納得する事業計画」を作成する必要があります。
◆事業計画の作成方法に関する記事は、こちらでもお読みいただけます
4.新規事業の検証・修正
金融機関に新規事業計画書を提出して、承認されれば、融資を受けられます。必要な資金を確保できたら、いよいよ大々的に発売開始です。
と、いいたいところですが、本格的な販売の前に、まずは新規事業の検証(テストマーケティング)をおこないましょう。
事業計画の検証もせずにいきなり多額の資金を投入したら、もしなにか問題点を発見しても、資金不足で肝心の修正ができません。
テストマーケティングは、オンライン広告を用いた「比較テスト」が基本です。まず少額(数万円〜10万円程度)の広告を2パターン出して、反応のよい方法を調べます。
反応のよい方法とまた別の方法を比べて、結果が出る方法をピックアップ。これを何パターンも繰り返します。最終的にもっとも効果の高い方法がわかったら、その方法を軸にして、本格的に販売をスタートしていくわけです。
また最近では、テストマーケティングの一環として、クラウドファンディングを活用している企業も増えています。
テストマーケティングの方法は本当にたくさんあるので、後述する外部コンサルタントなどを活用して、しっかりと事業計画を検証していってください。
新規事業の開発を成功させるポイント
ここまで、新規事業開発4つのプロセスを解説してきました。ここからは、新規事業の開発を成功させるポイントについて、深堀りしていきます。
この章で解説するのは、以下の6点です。
- まずはニッチ市場でNo.1を狙う
- ビジネスはタイミングが命
- 店舗販売?会員制?マネタイズの方法を比較検討
- できるだけ「低資本」「低在庫」のビジネスを選ぶ
- 返済負担の少ない資金調達を心がける
- 外部リソースを上手に活用する
ひとつずつ解説します。
まずはニッチ市場でNo.1を狙う
資金も知名度もない中小企業が新規事業戦線を勝ち抜くには、必然的にライバルの少ないニッチ市場を狙うようになるでしょう。
大手企業のいないニッチ市場でシェアを伸ばし、ほかの企業が参入してくるころには、No.1企業として圧倒的な強者になっている。これが、中小企業が狙うべき、新規事業開発を成功させるセオリーです。
ただし、ひとつ注意点があります。素早くといいましたが、まずはじっくりと、ニッチ市場の市場性を確認していただきたいのです。
あなたが進もうとするニッチ市場が、これまで手つかずだった理由は、一体なんでしょうか?
多くの企業が進出を試みて、すでに失敗をしているという可能性はないでしょうか?
手つかずなのは、もしかすると、もともとそのニッチ市場に、新規事業としての旨味がないのかもしれません。
そういった「危険なニッチ市場」を回避するには、差別化を武器に、新しいニッチ市場を作り出すのが一番です。ぜひ、さまざまな角度から、進出すべきニッチ市場をリサーチしてください。
ビジネスはタイミングが命
新規事業開発の成否は、商品選びよりも、市場に参入するタイミングにかかっています。参入のタイミングが悪ければ、どんなにいい商品でも、思うような結果は残せないでしょう。
成功の確率がもっとも高いのは、導入期から成長期に移行するタイミングでの参入です。ニッチ市場を狙うというと、誰も知らない市場(導入期)での参入をイメージするかもしれません。
しかし、あまりにも初期に参入すると、商品を世の中に認知してもらうためのコスト負担が大きすぎます。かといって、誰もが使い出すタイミング(成長期)に参入しても、中小企業にはほとんど勝ち目がないでしょう。
そういう意味でいうと、普段私がオススメしている「モノマネ発想法」は、参入時期によるリスクを大きく軽減してくれます。
モノマネ発想法については、別記事にて解説していますので、そちらを確認してみてください。
店舗販売?定額課金制?マネタイズの方法を比較検討
新規事業の開発には、当然販売方法の精査も含まれます。とくに現在はコロナウイルスの影響もあり、これまで対面でおこなってきたサービスも、オンラインへの移行が加速している状況です。
たしかに、販売系であれば通販で十分対応できますし、カウンセリングやコンサル・教育などの分野も、オンラインで実際に会話をしながらやりとりできます。
実際のところ、店舗展開には、多額の「家賃」「設備費」「人件費」などが必要です。
その点オンラインなら、家賃や設備費はほとんどかかりません。人件費にしても、今はオンラインアシスタントや外注を活用すれば、最低限の費用で済みます。そう考えると、これからは、やはりオンライン展開を中心に考えていくのが、基本になりそうですね。
また、オンラインの活用という意味では、サブスクリプション型のビジネスモデルも見逃せません。サブスクリプションというのは、サービスの利用期間に応じて料金を支払う「定額課金制」のビジネスモデルです。
【日本で利用できるサブスクリプション例】
- Kindle Unlimited(書籍定額読み放題サービス)
- Hulu(動画定額視聴サービス)
- Apple Music(音楽定額配信サービス)
- Adobe Creative Cloud(アプリ定額利用サービス)
- メチャカリ(洋服定額レンタルサービス)
上記はほんの一例でしかなく、サブスクリプション方式を取り入れている企業は、増加する一方です。
サブスクリプションの魅力は、なんといってもリピートが期待できるところでしょう。新規顧客を探す莫大なコストが軽減できますから、資金の少ない中小企業は、ぜひ積極的に検討してみてください。
できるだけ「低資本」「低在庫」のビジネスを選ぶ
当たり前の話ですが、資金の少ない中小企業であれば、できるだけ「低資本」「低在庫」の新規事業を選んでください。
理由はおわかりですよね。低資本・低在庫で、初期費用をできるだけ減らすためです。
ただ誤解していただきたくないのですが、本来新規事業には、ある程度まとまった資金が必要です。広告や営業などの販売活動に、まとまった資金を投入できれば、そのぶんだけ結果が早くでます。
また、もしも入金額が足りずにキャッシュアウトしたら、新規事業は完全にストップしてしまいます。そういった状況を回避するためにも、入金がなくても固定費などの支払いができるだけの運転資金は、最低限確保しておく必要があるでしょう。
(最低でも半年、できれば1年分は確保したいところです)
というわけで、低資本というのは、決して「借り入れをしない」という意味ではありません。必要な資金はきちんと借りつつ、オンラインサービスの活用でムダな経費を極力抑えながら、起業しましょうという意味です。
そういった点だけは、ぜひ誤解のないようにお願いします。
返済負担の少ない資金調達を心がける
前述のとおり、新規事業には資金調達が欠かせません。しかし、融資を受ければ、当然返済義務が発生します。この返済の意識が不足していると、後々経営を直撃する可能性が高くなりますので、十分に注意してください。
具体的にいうと、まず資金返済の負担を考えて、極端に借入額を減らすのはNGです。
借入額が少なければ、たしかに返済負担は少なくなります。しかし、返済負担が減っても、肝心の運転資金をまかなえなければ、そもそも融資を受ける意味がありません。
また多くの経営者は、長期返済負担によりキャッシュフローが悪化するのを、非常に嫌います。そのため、できるだけ短期(2年程度)での借り入れを選択する傾向が強いです。(ようは、早く返してしまいたいということです)
でも、もっともポピュラーな政策金融公庫の場合、返済期間は7年(運転資金)が、ひとつの目安になっています。
それならばムリをせずに、せめて5年以上の返済を選ぶべきです。長期返済ならば、毎月の返済額を低く設定できますので。いずれにしても、できるだけ返済負担の少ない資金調達を心がけてください。
◆資金調達に関する記事は、こちらでもお読みいただけます
外部リソースを上手に活用する
新規事業の開発を手掛けるには、外部リソースを上手に活用するのがポイントです。もちろん、社内の設備や人材も、可能であればどんどん利用していきましょう。
ただし社内リソースは、基本的に既存事業のためのモノです。とくに新規事業立ち上げの経験をもつ人材が、中小企業に在籍しているとは、まず考えられません。なにしろ、経営者自身にも、新規事業立ち上げの経験など、ほとんどないのですから。
新しく設備機器を購入したり、経験のある社員を雇ったりする方法もありますが、コストがかかりすぎるため、あまりオススメできません。
それよりも状況に応じて、設備機器のリースやOEMを検討したほうが、過剰投資リスクを回避できます。
また人材に関しては、そもそも「新規事業に精通した人材を確保するのがむずかしい」という問題があります。かりに雇用できても、報酬はそれなりに必要だし、立ち上げの途中に退職されてしまうリスクも考えておかなければなりません。
そう考えると、コンサルタントなど、外部のリソースを活用していくほうが、確実ではないでしょうか。
まとめ
よほどの大企業でもない限り、社内に新規事業開発のエキスパートが在籍しているなど、まずあり得ません。ということは、経験による、ある意味勘に頼った方法では、新規事業の開発は困難だということです。
新規事業の開発を成功させたいのなら、今回紹介したステップに従い、なるべく早く新規事業の開発プロセスを明確化してしまいましょう。やるべきことさえ明確なら、あとはそのプロセスを煮詰めていくだけです。
ただし、新規事業の開発は、奥が深いもの。実際には、もっとこまかいポイントまで詳細に検討していく必要があります。新規事業の開発について、さらに詳しい情報を知りたいかたは、私どもの無料Webセミナー「新規ビジネスの創り方」にてご確認ください。