記事の監修
株式会社リアルプロモーション 代表取締役松本剛徹
2011年に株式会社リアルネットを創業して、20代経営者ベストベンチャー30に選出される。
現在、全10事業を多角的に展開し、AI・教育・Webマーケティング・プロモーションなど4社を経営。
グループ年商は20億円を突破。事業売却や事業譲渡、会社売却を経験してきたシリアルアントレプレナー(連続起業家)として活躍中。
これまでに24個の新規事業を立ち上げてきた私のもとには、新規事業を検討している経営者からの相談が、ひっきりなしに寄せられてきます。
アイデアの出し方から資金調達まで、相談されるさまざまな悩みのなかでも、とくに多いのが「新規事業の企画」に関する悩みです。
思えば私自身もはじめて企画を立てたときは、どうやって企画をすればいいのかがサッパリわからずに、非常に困ったのを覚えています。
そこで今回は、新規事業の企画にもっとも重要な「アイデア探し」と、新規事業企画書づくりのポイントをご紹介していきます。
目次
新規事業の企画を決定づける「使えるアイデアのリサーチ方法」とは
ビジネスアイデアを見つけるなら、まずは消費者の不平不満をリサーチしていきましょう。なぜなら、そういった不平不満を解消する商品(サービス)を提供すれば、該当する消費者に高い確率で購入してもらえるからです。
ただ、どうやって不平不満を探せばいいのかがわからないという人も、少なくないと思います。この章では、消費者の不平不満のリサーチ方法を、4点ご紹介していきます。
- 大手物販サイトのレビューチェック
- 「Yahoo!知恵袋」などの質問サイトは、アイデアの宝庫
- 「ラッコキーワード」「キーワード プランナー」で検索トレンドを探る
- 「ビザスク」で専門家の意見を取り入れる
ひとつずつ、じっくりと見ていきましょう。
大手物販サイトのレビューチェック
最初にやっていただきたいのは、楽天やAmazonなど、大手物販サイトのレビューチェックです。具体的には、レビュー数は多いのに「☆ひとつ」しか評価されていないレビューを、探していきます。
人気があるのに、☆がひとつということは、その投稿主は相当な不満をもっているはずです。あくまでも匿名の意見なので、100%鵜呑みにはできないとしても、不満を解消する製品づくりには大いに参考になるでしょう。
試しに、実際に私が使っている「タブレットスタンド」を、Amazonでリサーチしてみました。89%もの人が☆4つ以上の高評価をつけているなか、「底面の保護ゴムが劣化して、机が汚れてしまう」という、☆ひとつのレビューを見つけました。
「ガタつきが気になる」というレビューも多かったので、耐久性の高いゴムに変更して、ガタつきをなくせば、もしかするともっと売れる商品に化けるかもしれません。
これはあくまでも一例ですが、このように「低評価レビューを改善したらどうなるか」という観点から、どんどんレビューをチェックしてみてください。
「Yahoo!知恵袋」などの質問サイトは、アイデアの宝庫
前述のレビューチェックだけでなく、「Yahoo!知恵袋」などの質問サイトも、情報の宝庫です。
質問サイトとは、サイト上にされた質問に対して、匿名の第三者が回答してくれる「知恵の共有サービス」のこと。
「◯◯って実際どうですか?」といった質問に対して、多くの回答が寄せられ、なかにはとても参考になるアドバイスも見受けられます。
ただし、こちらもAmazonレビューと同様に匿名なので、正直いって、適当な回答も少なくありません。したがって、質問サイトはあくまでもネタ探しと、割り切ってください。もし深堀りするならば、真偽の確認を忘れないようにお願いします。
ちなみに、Yahoo!知恵袋以外にも、有名な質問サイトはたくさんあります。
- 発言小町
- 教えて! goo
- 人力検索はてな
- OKWAVE(オウケイウェイヴ)
- Quora(クオーラ)
それぞれ質問と回答の傾向が異なりますから、同じ質問で複数のサイトを比較してみるとよいでしょう。
「ラッコキーワード」「キーワード プランナー」で検索トレンドを探る
※参考:ラッコキーワード
商品ニーズを探すという意味では、「ラッコキーワード」や「キーワード プランナー」などの「キーワードリサーチツール」も、非常にオススメです。
たとえば、ラッコキーワードで「ニキビ 化粧品」と検索すると、上図(一部抜粋)のような検索キーワードが表示されます。
「にきび 化粧品 あご」「ニキビ ビタミン 化粧品」「敏感肌 乾燥肌 ニキビ 化粧品」など、いくつか深堀りできそうなキーワードがありますね。
私どもが販売している、あごのニキビ専用クリーム「メルライン」は、まさに「にきび 化粧品 あご」というニーズから生まれた商品です。
キーワードリサーチツールのよいところは、自分では思いつかないようなキーワードが発見できる点にあります。いろいろなキーワードを使って、潜在的なニーズをどんどん発掘していきましょう。
「ビザスク」で専門家の意見を取り入れる
これまで紹介した方法は、すべて無料サービスなので、いつでも気軽にリサーチできます。しかしその反面、こまかい情報を深堀りできる手法ではないので、あくまでも「アイデアのきっかけ探し」という割り切りが必要です。
もしすでにアイデアのタネを見つけているなら、専門家に詳しく相談できる「ビザスク」をオススメします。
事業アイデアの相談に限定するなら、長期コンサル契約は必要ありません。その点、短期間(単発も含む)の相談ができるビザスクなら、一般的な長期コンサルタントよりも相談費用を格段に安く抑えることが可能です。
ビザスクについては、以前別の記事でも紹介していますので、よかったらそちらの記事も確認してみてください。
新規事業企画書づくり7つのポイント
アイデア探しの方法をご理解いただいたところで、今度は新規事業企画書づくりのポイントを、7点ご紹介していきます。
- 新規事業の目的を明確にする
- 見つけたアイデアを差別化につなげる
- 自社リソースの把握
- 必要な予算と採算性を盛り込む
- 競合分析はできているか
- リスク対策を万全に
- 目的別に複数の新規事業企画書を用意
ひとつずつ解説します。
1.新規事業の目的を明確にする
新規事業企画書には、大きく「関係者に事業内容を周知徹底する」「金融機関に、融資の承認をもらう」という2つの意味があります。
その際に、「どうしてこの事業をやるのか」という目的(ビジョン)が明らかでないと、関係者と金融機関の同意は得られません。
- なぜ今、自社でこの事業をやるのか
- 新規事業でどのように社会貢献できるか(なにを解決できるか)
- 新規事業を通して、これからどうなっていきたいのか
何だかんだいっても、新規事業は経営者の熱意が大きなウェイトを占めています。人を巻き込むような熱意のある事業企画がつくれなければ、おそらく誰も賛同してくれないでしょう。
ぜひ、事業企画書を読む誰もが「これなら頑張ってやる価値がある」と思えるような、「事業の目的」を見つけてください。
2.見つけたアイデアを差別化につなげる
いきなり身も蓋もない話になりますが、現代の日本では、すでにほとんどのモノやサービスが行き渡っています。
つまりどんなによいアイデアでも、なにかしらの差別化がなければ、消費者に選んでもらえる確率は低いのです。したがって私たちは、新商品に必ず差別化を付与し、消費者に「これならぜひ買いたい」と思ってもらう必要があります。
また、その差別化された商品は、できるだけライバル企業のいない「ブルーオーシャン市場」で、展開してください。
大手ライバル企業がたくさんいる市場だと、少しばかりの差別化など、すぐにマネされてしまいます。そうなれば、知名度のない中小企業は、間違いなく競争に負けてしまうでしょう。
◆ブルーオーシャン市場に関する記事は、こちらでもお読みいただけます
3.自社リソースの把握
新規事業の企画を立てる際には、まず自社リソースの分析が必要です。新規事業は、既存事業と、商品も製造・販売ルートもまったく異なるケースが少なくありません。そのため、今あるリソースで立ち上げが可能かどうかを、しっかりと確認する必要があるのです。
もし自社リソースだけでは、新規事業の立ち上げが困難であれば、新規事業の実現性を再度検討したほうがいいかもしれません。
同時に、外注やコンサルタント契約など、外部リソースの活用で乗り切れるかどうかも、合わせて検討しておいてください。
またさきほど、新規事業と既存事業はまったく別物といいました。しかしながら、もし「既存事業に関連する分野」で新規事業を展開できれば、自社の強みを最大限に活かせます。
いきなり異分野をリサーチするよりも、自社や業界の問題点を解決できるビジネスはないか、まずはそこからスタートしたほうが圧倒的に効率的です。
4.必要な予算と採算性を盛り込む
事業企画でもっとも重要なパートが、予算の計上と採算性です。とくに金融機関は、どのくらい資金が必要で、本当にその事業で採算が取れるのかをシビアにチェックしてきます。
- 売上
- 予算
- 利益率
- 損益分岐点
- 資金調達
少なくとも、上記の項目がきちんとわかるように、貸借対照表や損益計算書を作成してください。1年では短すぎるので、できれば5年分は作成しておきたいところです。
ただし、貸借対照表と損益計算書だけでは、肝心のお金の流れが見えてきません。資金ショートでの返済遅延が発生しないことを証明するためにも、毎月のキャッシュフローもきちんと提示しましょう。
また、実際のお金のやり取りでは、支払いと入金時期のズレが頻繁に生じます。業種によっては、半年後の入金(売掛金)などという、厳しい支払い条件も少なくないのです。
こうなると、せっかく売上が好調でも、入金が間に合わずに支払ができない事態にもなりかねません。
これがいわゆる「黒字倒産」ですよね。こういった事態を起こさないためにも、リスクも加味して、お金の流れをしっかりと計画していきましょう。
5.競合分析はできているか
新規事業を企画するうえで、競合分析は命綱ともいえるべき重要な要素です。前述のとおり、競合企業との戦いに勝つには、なんらかの差別化が不可欠といえます。つまり、正面からぶつかり合うのではなく、差別化をもって競合と市場をズラしていくわけです。
競合分析のポイントは、商品やサービスの比較だけでなく、競合企業の戦略までもこまかく分析するところにあります。
そのためにも、自社と競合を比較検討するフレームワーク「3C分析」や「SWOT分析」などを、どんどん活用してみてください。
フレームワークなら、検討するステップがある程度決まっているので、比較条件の取りこぼしを最小限に抑えられます。
◆フレームワークに関する記事は、こちらでもお読みいただけます
6.リスク対策を万全に
新規事業は、もちろん事業の実現性が一番重要です。当然ながら、多くの経営者は、新規事業がうまくいくことしか考えていません。
しかし現実には、毎年3〜6%の企業が廃業※しているわけで、失敗を想定したリスク対策を入念におこなう必要があります。
リスク対策というと、実際の経営に関するものをイメージしがちですが、多様化が進む現代では、ほかにも検討しておくべきリスクがたくさんあります。
たとえば、情報漏洩リスクです。中小企業では、顧客リストも少ないので、あまりピンとこないかもしれませんね。しかし、もしも顧客情報が漏洩すれば、企業の信頼性が疑われ、売上に大きな影響が出るのは必至です。
また現在も猛威を振るうコロナウイルスや浸水などの、突発的な災害や事故も想定しておくべきでしょう。これからは、店舗や工場、あるいはオフィスですら、極力自社で保有しない意識が必要になってくると思います。
※参考:中小企業・小規模事業者の実態
7.目的別に複数の新規事業企画書を用意
「1.新規事業の目的を明確にする」では2つと説明しましたが、厳密にいうと新規事業企画書には、大きく3つの目的があります。
- 関係者に事業内容を周知徹底するため
- 金融機関に、融資の承認をもらうため
- 社外向けに公表するため(リクルートやIR情報向け)
目的が異なれば、当然記載する内容にも、個別に工夫が必要です。
たとえば、関係者向け事業企画書の場合、新規事業が成功して得られるメリットを前面に打ち出せば、関係者のモチベーションアップが期待できます。
また金融機関向けの事業企画書なら、金融機関の稟議を通すのが目的です。そのためには、事業の差別化や収支計画・リスク管理などをしっかり記載し、事業の実現性を強くアピールしなければなりません。
リクルート用なら、企業のビジョンのほかにも、待遇面や将来性を強くアピールするようになるでしょう。
このように事業企画書は、目的に応じて複数用意しておくのが基本です。事業企画書の作成については、以下の記事でも確認できます。よかったら、そちらも読んでみてください。
新規事業のアイデアが思い浮かばない時は?
新規事業のアイデアが思い浮かばない時はどうすればよいのでしょうか。その解決方法について見ていきたいと思います。
市場ニーズから逆算する
市場ニーズから逆算することで、使えるアイデアが出るかもしれません。商品やサービスの企画は自発的なアイデアから始めないと独創性が出ないという説もありますが、商売として考えるのであれば市場ニーズから逆算するのが効果的です。
いくら独創的なものをリリースしたとしても、ニーズがないと市場に受け入れられないからです。一方、市場ニーズから逆算したものであれば需要予測が立てやすいため、プロモーションやセールスの道筋が明確になるでしょう。
ただ、市場ニーズは時間とともに変化する点に注意が必要です。アイデアを出した時にはニーズがあったものの、企画を進めているうちに環境が変化してしまったということもありえます。
市場ニーズから逆算してアイデアを出す場合、その後のプロセスをなるべくスピーディーに進めた方がいいかもしれません。とはいえあまり急ぎすぎても失敗の原因になるため、市場や自身の状況を俯瞰的に見て判断することが大事です。
既存の商品やサービスを分析する
既存の商品やサービスを分析することで、新たなアイデアを得ることができるかもしれません。既存の商品やサービスはあるアイデアが形になったものであり、その源泉を辿ることで参考になるものも多いでしょう。
ただ、いわゆるパクリにならないよう気をつける必要があります。著作権や特許権を侵害してしまうと賠償責任を負う可能性もありますし、そこまでいかなくとも市場からそっぽを向かれてしまうリスクも考えられます。
あくまでも参考程度にとどめておきましょう。
フレームワークを活用する
フレームワークを活用することで、アイデアを拡張できるかもしれません。フレームワークとは思考補助のための仕組みであり、決められた手順を踏むことで新しいアイデアや拡張されたアイデアを得ることができるものです。
フレームワークを上手く利用できたら、アイデア出しの問題を解決できるでしょう。世の中にはさまざまなフレームワークが存在するため、一つの手法が駄目でも他を試すことができるからです。
企画出しの強い味方、フレームワークとは?
フレームワークについてもう少し詳しく見ていきたいと思います。フレームワークとは、どのようなものでどういった役に立つのでしょうか。
定形プロセスにあてはめることでアイデアを産出するもの
フレームワークとは、定形プロセスにあてはめることでアイデアを算出するものです。こちらはあくまでビジネス上の意味であり、たとえばITでは「システム開発を容易にするためのひな形」という形で用いられます。
定形プロセスにあてはめるだけでアイデア出しを促進できるため、煮詰まった時などに最適です。逆に言うと、自由な発想が次々に沸いてくるような時には適していないかもしれません。
フレームワークを使うと思考を規定の枠に嵌める形になり、想像力が制限される恐れがあるからです。自身の状況に応じ、適切な手法を用いることが大事です。
上手く使えば効率的な企画立案に繋がる
フレームワークを上手く使えれば、効率的なアイデア出しや企画立案に繋がります。(言い方は悪いかもしれませんが)思考停止で既存のプロセスに則ることで勝手に思考やアイデアが拡張されるからです。
場合によっては、フレームワークから産出されたものがそのまま使えるアイデアになるかもしれません。一般的なやり方では思いつかないアイデアを容易に得られるのがフレームワークのメリットです。
逆に、思考を型に嵌めることによって自由な発想を制限してしまうのがデメリットと言えるでしょう。そのため、使い所はしっかりと考える必要があります。
アイデア出しに煮詰まっている時は有効ですが、自由な発想でどんどんアイデアが沸いてくるような時は向いていないかもしれません。
フレームワークの一例
では、どのようなフレームワークがあるのかを見ていきましょう。下記に紹介するもの以外にも多種多様なものが存在するため、自身に合ったやり方を見つけるのが大事です。
マンダラート
マンダラートはマス目の中心にメインテーマを記述し、そこから連想される項目を周囲8マスに記載します。そして、周囲に記載されたものを少し離れた場所にメインテーマとして記述し、また連想される項目を周囲に書いていきます。
これにより元々のメインテーマとなったものを深掘りしたり、実際に何をすべきかなどを明確化することができます。マンダラートは、メジャーリーグの大谷選手が活用していたことでも有名ですね。
ブレインストーミング
ブレインストーミングは複数人で、細かいことを考えずひたすらアイデアを出し合う手法です。どちらかというと質より量を優先したい際に有効でしょう。
ブレインストーミングは一人でも行うことができますが、複数人で行った方がアイデアの連結制などにより効果的になります。ブレインストーミングを行う際の大事な点として「他人のアイデアを否定しないこと」「出たアイデアを組み合わせてみること」などが挙げられます。
KJ法
KJ法は、ブレインストーミングとセットで行われることの多い手法です。ブレインストーミングで得られたアイデアをカードなどに記載し、同じグループとセットにしたり整理・分析します。
KJ方を活用することで、アイデアの可視化や課題の明確化などに寄与するでしょう。出たアイデアを上手く整理すれば、そのまま形にできるかもしれません。
KJ方のデメリットは、ブレインストーミングの質に依存される点です。ブレインストーミングの参加人数や参加者の熱量、出たアイデアの数などにより結果が異なってきます。
まとめ
冒頭でもお話ししたように、多くの経営者が新規事業の企画について悩んでいます。ほとんどの経営者は、これまでに新規事業を企画する機会がほとんどなかったはずですから、ある意味悩んで当然なのです。
しかし、新規事業の企画では、じつはやるべきことが明確に決まっています。
今回の記事で、そのやるべき概要は、しっかりとご紹介しました。あとは詳細なポイントを煮詰めていくだけです。
新規事業企画の詳細については、ここでは説明しきれませんので、無料Webセミナー「新規ビジネスの創り方」にてご確認ください。