記事の監修
株式会社リアルプロモーション 代表取締役松本剛徹
2011年に株式会社リアルネットを創業して、20代経営者ベストベンチャー30に選出される。
現在、全10事業を多角的に展開し、AI・教育・Webマーケティング・プロモーションなど4社を経営。
グループ年商は20億円を突破。事業売却や事業譲渡、会社売却を経験してきたシリアルアントレプレナー(連続起業家)として活躍中。
新規事業の立ち上げがむずかしいのは、新規事業立ち上げの進め方を知っている人が極端に少ないところにあります。
たとえあなたが百戦錬磨の経営者だとしても、これまでに立ち上げた新規事業は、おそらくひとつか多くてもふたつでしょう。ましてやこれまでに起業をしたことがない人なら……
新規事業が、スムーズに進行するほうが不思議ですよね。
しかし、私がクライアントにいつもアドバイスする6つのステップをしっかり守れば、新規事業の進め方に迷うことはなくなるはずです。
そこで今回は、新規事業の進め方「6つのステップ」と、新規事業を進めるうえでのNG行為について、詳しく解説していきます。新規事業の進め方に不安のある人には、今回の記事はきっと大きな助けになるでしょう。
目次
新規事業の進め方「6つのステップ」
普段創業セミナーで「6つの方程式」としてご紹介している内容を、進め方に悩んでいる人向けにわかりやすく解説していきます。この章で解説するのは、以下の6ステップです。
- ビジネスチャンスのリサーチ
- ビジネスアイデアを具体的に磨き上げる
- 売れるビジネスコンセプト
- 「誰に・何を・どうやって売る」
- 資金調達のプロになろう
- テストマーケティングで、売れる方法を探す
ひとつずつ解説していきます。
1.ビジネスチャンスのリサーチ
新規事業を進めるファーストステップは、ビジネスチャンスのリサーチからスタートします。まずは「どういうビジネスをおこなうか」そのネタがなければ、ビジネスは1mmも動きません。
リサーチの内容ですが、あれこれ適当にリサーチするのはもちろんダメです。リサーチの目的は、「不平不満の収集」この1点に絞ってください。
なぜなら消費者の多くは、自分の困りごとを解消してくれる商品に対して、優先的にお金を払ってくれるからです。
「世の中に溢れる不平不満を見つけ出し、その不満を解決する商品を提供する」この基本原則から外れさえしなければ、新規事業は8割方成功したようなものです。
具体的なリサーチの方法ですが、私が実際に使っているのは、全部で12パターンあります。なかでもとくに重要な3つの方法について、以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。
◆リサーチに関する記事は、こちらもどうぞ
2.ビジネスアイデアを具体的に磨き上げる
リサーチで見つけたアイデアは、いうなればビジネスの原石です。具体性がなさすぎて、そのままでは、新規事業として使いものになりません。
したがって、誰がどの方向から検証しても「それならイケる!」と納得できるように、ビジネスの原石をピカピカに磨き上げていく必要があります。
ビジネスアイデアを磨き上げる方法として、いつも3つの方法をご紹介していますが、なかでもモノマネ発想法には、ぜひ真剣に取り組んでいただきたいと思っています。
現在、日本でうまくいっているビジネスの多くが、海外のビジネスモデルを日本に持ち込んだ、いわゆる「タイムマシン経営」です。
あまりに有名すぎて忘れかけていますが、あのセブン-イレブンも、元々はアメリカのビジネスを日本に輸入したものでした。
残念ながら近年は、Facebook・Amazon・Uber Eatsのように、海外のビジネスがそのまま上陸するケースも多いです。
昔のようにタイムマシン経営を使う機会は減少しているとしても、海外には日本にないビジネスモデルが、まだまだたくさん眠っています。ぜひ上手に、モノマネしていきたいですね。
3.売れるビジネスコンセプト
ビジネスアイデアを磨き上げたら、今度は「◯◯といえば、あの商品」というコンセプト設定をおこなってください。
ビジネスコンセプトの設定は、新規事業の成否を決定づける最重要項目です。コンセプトさえ、うまく世の中に浸透できれば、あなたの商品は市場でしっかりと支持されていくでしょう。
コンセプトの差が業績に現れているわかりやすい例が、カフェ業界です。日本でカフェといえばドトールが長らくトップを維持していましたが、現在ではスターバックスに不動の位置を奪われています。
これは、スターバックスの「高級でおしゃれなカフェならスタバ」というコンセプトが、世の中に広く受け入れられた結果です。
もちろんドトールにも「大衆的なコーヒーならドトール」というしっかりとしたコンセプトはあります。(私個人の感想です)
ただし、「大衆的なコーヒーなら、別にコンビニのコーヒーで十分」というのが、今の風潮です。つまり、コンセプトが時代とマッチしなくなってきたわけです。
カフェ業界でいえば、また別なコンセプトをもつ「コメダ珈琲店」の急成長が素晴らしいですね。でも、明確なコンセプトをもつスターバックスの牙城は、まだしばらくは崩れそうにありません。
いずれにせよ、売れるビジネスコンセプトづくりは、新規事業の進め方の最重要課題です。ぜひじっくりと、取り組んでみてください。
4.「誰に・何を・どうやって売る」
「新規事業の進め方」第4ステップは、売れるビジネスモデルの構築です。厳密にいえば、5W1H「いつ・どこで・誰が(誰に)・なにを・なぜ・どのように」を基に、計画を立てていくべきでしょう。
しかし経験の少ない人があまり広範囲に意識を向けても、かなりの確率で失敗します。であれば、もっとも重要な「誰に・何を・どうやって売る」に、まずは焦点を絞っていくべきです。
毎回お話ししていますが、上記3つのなかでもとくに重要なのは、「誰に売るか」というターゲット(ペルソナ)設定です。
中小企業は知名度がないので、ペルソナをとにかく絞り込み、深くピンポイントに宣伝・販売活動をおこなうのが基本になります。
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5.資金調達のプロになろう
ビジネスモデルの構築までくれば、今度は資金調達をおこないます。もちろん、必要な資金をすべて自己資金でまかなえれば、なにもいうことはありません。
ただ企業がおこなう新規事業ともなれば、必要な資金は少なくとも千万円単位でしょう。となれば、やはり第三者から借り入れをする必要が出てきます。
幸いなことに現在では、以下のように資金調達の方法がたくさんあります。
- 日本政策金融公庫
- 民間の金融機関
- 自治体の補助金
- 個人投資家(エンジェル投資家)
- クラウドファンディング
なかでも中小企業のファーストチョイスになるのは、やはり金利や返済期間が優遇されている「日本政策金融公庫」になるでしょう。また「ものづくり補助金」のように、返済不要で最大1,000万円が補助される制度もあります。
別にどれかひとつだけしか利用できないと決められているわけではないので、利用できる制度はすべて利用するくらいの気持ちで、いろいろな融資制度をリサーチしてみてください。
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6.テストマーケティングで、売れる方法を探す
資金調達のメドが立ったら、いよいよ実際に販売を開始します。ですが、間違っても、いきなりフル生産して売り出すのはやめてください。
まずは、少額でテストをしましょう。テストをせずにいきなり大金を投入してしまえば、うまくいかなかったときの軌道修正ができません。
どんなに素晴らしい商品でも、緻密に構築したビジネスモデルがあっても、実際に売ってみないと結果はわからないものです。
では、具体的にどうやってテストマーケティングをするかというと、少額広告での比較テストが基本になります。
AプランとBプランを比較して、結果のいいプランとまた別なCプランを比較してみる。というように、いくつものプランを一通り試してください。
テストマーケティングの結果があって、はじめてある程度の資金投入ができるのです。しつこいようですが、本格的に販売を開始する前に、できるだけたくさんのテストマーケティングをおこなうようにしましょう。
これだけはやるな!新規事業の進め方NGまとめ
ここまで新規事業の進め方「6つのステップ」を解説してきました。この章では、決してやるべきではない、新規事業の進め方NG集をご紹介していきます。
レッドオーシャン市場にいきなり参入
すでにたくさんの企業が参入し、血で争うような激しい競争が頻発する市場を、レッドオーシャン市場といいます。
もうおわかりだと思いますが、資金も知名度もない中小企業がいきなりレッドオーシャン市場に参入するのは、はっきりいって自殺行為以外の何ものでもありません。
フィンテック・キャッシュレスなどの最新技術分野や、今流行っている分野に関しては、とくに注意が必要です。
たしかにうまく時流に乗れれば、大きな成功が手に入るかもしれません。しかし注目度の高い分野には、やはり参入する企業数もケタ違いです。
「中小企業は、まずライバルの少ないブルーオーシャン市場でNo.1を目指す」これが、中小企業の正しい戦略だと思います。
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新規事業の立ち上げを責任者に任せてしまう
あなたが経営者なら、担当者を決めて全業務を丸投げしたくなるかもしれません。なんといっても、自分にも新規事業立ち上げの経験がほとんどないのですから、誰かにやらせてしまいたいという気持ちはよく理解できます。
もちろん、調査・計画作成・関係機関との折衝など、実務面を社員に任せるのはまったく問題ありません。しかし、新規事業の成否に関わる重要事項の意思決定だけは、決して人任せにしないでください。
なぜなら、中小企業がおこなう新規事業の成功は、トップの姿勢がすべてだからです。経営者であるあなたが、責任もって新規事業に取り組む姿勢を見せなければ、社員の誰も真剣に新規事業を成功させようとは思ってくれません。
必要な人材を社内だけでまかなおうとする
参考:新事業展開の促進 第3章
2017年の中小企業白書によると、新規事業展開を実施していない企業の課題として、「人材不足」が43.8%とダントツに多いそうです。
つまりこれは、必要な人材を社内だけでまかなおうとすると、新規事業は確実に失敗するという意味でもあります。
であれば、方法はふたつ。ノウハウをもつ人材の雇用か、外部にノウハウを求めるしかありません。
個人的には、外部に協力をもとめるほうが断然オススメです。なにしろ、人を雇えば、莫大な雇用コストがかかります。また雇用した人材が辞めてしまえば、またゼロから人材を探さなければなりません。
長期的なスパンで考えれば、いずれはそういった人材の雇用も必要だと思いますが、まずは外注や外部コンサルタントの起用で対応していく方法を強くオススメします。
最悪の事態を想定していない
仕事柄、私は、たくさんの事業計画書を拝見する機会があります。どの事業計画書もよくできており、さすがに勉強されているなと、感心させられることも少なくありません。
ただ残念なことに、失敗したときのことを想定していない事業計画も多く、不安を感じることがよくあります。もちろん、リスクマネジメントという形で、失敗の想定と対策はしっかりと盛り込んではありますよ。
しかし、新規事業は必ずうまくいく前提で計画しているので、リスクマネジメントはあくまでも金融機関対策でしかありません。おそらく、失敗したときのことを本気で想定している人は、ほとんどいないはずです。
事業に失敗すれば、通常大きな損失をともないます。契約の仕方によっては、経営者個人が自己破産に追い込まれる可能性もゼロではありません。
また新規事業がダメになれば、既存事業にも影響する可能性があります。おそらく、企業としての信用も大きく損なうでしょう。
厳しい話になりますが、どこまでいったら事業から撤退するのか、そういったデッドラインとその脱出方法もしっかりと検討しておいていただきたいと心から思います。
なぜ新規事業を立ち上げる必要があるのか
新規事業の進め方について解説してきましたが、そもそもなぜ新規事業を立ち上げる必要があるのでしょうか。続いて、新規事業の必要性について解説します。
リスクの分散
まず挙げられるのは、リスクの分散です。企業にはそれぞれ主軸となる事業がありますが、変化の早い現代において市場や環境がどう変化するのかは誰にも分かりません。
最悪の場合、主軸となる事業では儲けられなくなってしまう可能性もあるわけです。そうなると会社組織を存続させるのが難しくなってしまうため、余裕のある内に新規事業を立ち上げて収益やリスクを分散させようといった考え方です。
もちろん、個人事業においても同じことが言えるでしょう。屋台骨が増えるほどに経営は安定し、より多くのことにチャレンジしやすくなります。
人材育成の機会になる
新規事業を立ち上げることで、人材育成の機会を得られます。新規事業の立ち上げに関わった人材は、普段の業務からは得られないさまざまなことを学べるからです。
既存の事業を継続するのとゼロから事業を立ち上げるのは、同じ「仕事」であっても多くの面が異なります。既存事業の継続は既に取引先や商品、シェアが存在するため、それを維持したりそこから拡張することを考えるのが主ではないでしょうか。
新規事業の立ち上げは、多くの面でゼロベースが求められます。どのような商品を作り、どのようにプロモーションし、どのような顧客にどのように売るかを白紙から考える必要があるでしょう。
その過程で、ビジネスに必要な能力が身につくわけです。
ノウハウの蓄積
新規事業を立ち上げることにより、ノウハウの蓄積も促せます。既存の事業においてもさまざまなデータやノウハウを収集しているかとは思いますが、ゼロベースから多くの判断および結果を得ることで、既存事業からは得られない類のものを蓄積させることができます。
新規事業におけるデータやノウハウを蓄積させることで、別の新規事業に活かすこともできるでしょう。それを繰り返すことにより、新規事業の成功率を向上させることも可能です。
新規事業を正しく進めるためのポイント
では続いて、新規事業を正しく進めるためのポイントをいくつか解説します。
自社の強みを活かす
まず考えたいのは、自社の強みを活かすという点です。前述の通り新規事業の立ち上げはゼロベースで行われることが多いですが、いくら白紙からのスタートとはいえ自社の弱点をベースにするわけにはいきません。
できれば、自社の強みを活かした形で始められるとベターです。どのような点にどのような強みを活かすのかはケースバイケースですが、たとえば下記のようなものが挙げられるでしょう。
- 営業プロセスおよび再現性に自信があったため、営業代行事業を立ち上げた
- 開発技術に強みがあったため、自社でオリジナルのアプリを立ち上げ運営した
強みを活かすためには、自社の特徴をしっかり棚卸しすることが大事です。
あらかじめ出口戦略を考えておく
あらかじめ出口戦略を考えておくことで、利益の最大化や損失の最小化に繋がるかもしれません。ビジネスシーンで使われる「出口戦略」とは、一定以上の利益や損失が生じた際に事業をどうするかを策定しておくことです。
損失の最小化に対しては「損切り」という言葉にも似ているでしょう。あらかじめ損切りラインを決めておいて、そこに達した場合はその事業から撤退するやり方です。
出口戦略を立てておくことでゴールが見えやすくなり、やるべきことが明確になる利点もあります。
必要なリソースをしっかりと把握する
必要なリソースを正しく把握しておくことで、新規事業をスムーズに進めることができます。必要なリソース量が分かっていないと新規事業の進行が遅延したり最悪ストップしてしまう恐れもあるでしょう。
新規事業に必要なリソースとしては、主に「資金」「時間」「人材」が挙げられます。このあたりは既存事業も同様ですが、新規事業の場合は必要量が分かりづらいという差異があります。
必要リソース量を計算する際には何かしらの根拠に基づき、かつできれば多めに確保するのがベターです。
資金調達の方法やスケジュールを立てておく
資金調達の方法やスケジュールを立てておくことで、資金繰りのトラブルをある程度防げます。資金調達にはさまざまな方法がありますが、大まかに「自己資金」と「それ以外」に分類できるでしょう。
自己資金から持ち出す場合はシンプルですが、他から調達する場合は返済方法や利子などに留意する必要があります。中には助成金や補助金といった返済不要なものもあるため、可能であれば利用を検討したいところです。
正しく情報収集する
正しく情報を収集することで、新規事業をスムーズに進めることができます。事業分野における情報ももちろんですが、手続きやルールなどといった基礎的な部分も疎かにしないよう気をつけましょう。
業種によっては資格や免許が必要になることもあるため、その場合は取得する必要があります。また、業界によっては暗黙のルールが存在したり特殊な市場が形成されている可能性もあるため、取りこぼさないようにしましょう。
とはいえ、できればシンプルな市場で新規事業を始めたいところです。新規事業の立ち上げにはただでさえ多くのリソースが要求されるため、それ以上増やすのは難しいケースが多いからです。
しかし、複雑な分野は参入障壁が高くシェアを得やすい利点もあるかもしれません。そのあたりを判断するためにも、やはり正しい情報収集が大事です。
まとめ
ほとんどの経営者は、新規事業の進め方がよくわかっていません。どんな経営者も、せいぜい1〜2回しか経験がないのですから、わからなくて当然でしょう。
しかし、足りないノウハウと経験は、起業をたくさん経験している人から教えてもらえばいいのです。今回は、これまでに24もの事業を立ち上げた経験とノウハウを惜しみなくご紹介しました。
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